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zoom RSS 耐震強度偽装事件について、考えてみた、けど、よくわからん。

<<   作成日時 : 2005/12/31 04:28   >>

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「巨悪」というものを想像して、世の中のすべての「悪」の根源をそこに求めるのは、たしかに、魅力的な考え方かもしれないが、他方で、事件のもつ意味を小さくしてしまうかもしれない。

たとえば、耐震強度偽装事件の構図を、権力犯罪という構図で描くというのが、それであろうか。
総研、ヒューザー、木村建設、平成設計(あるいは、確認検査機関も)が、姉歯氏の窮状につけこんで違法行為を「強要」し、自分たちはぬくぬくと金儲けをしたという筋書きがそれであり、加えて、これに政治家の関与があったのではないかと考える、ということである。
もし、そうであれば、制度自体も不備はあったが、なにより「悪い」のは、「あいつら」であって、「あいつら」をやっつけるということに社会の精力を費やすべきだということにもなろう。
そうでないとは、いえない。しかし、…

国土交通省の発表によれば、ヒューザー、木村建設、平成設計の関与した物件で、現在のところ、姉歯氏が関与した物件以外では、偽装は発見されていない。(参照
調査の対象が、301件で、うち半数近い149件が調査中等であるというのであるから、結論を急ぐことはできないが、現在まで判明している152件については、すべて偽装の事実がなかったということの意味をどう捉えるか、はひとつの問題であろう。

特に、
152件の中には、14日の証人喚問に提出された木村建設の「積算対比表」に記されていた非姉歯物件で、1平方メートル当たりの鉄筋量が51・14キロと、姉歯偽装物件よりさらに鉄筋量が少なかったホテルなど8件も含まれていた。(読売

という点については、考え込まざるを得ない。
もちろん、姉歯氏が、証人喚問の席上で主張したように、木村建設側の強い「圧力」が彼をして偽装に向けた可能性は否定できず、また、これを木村が認識していた可能性も否定できない。
ただ、姉歯氏が「これ以上はできない」ということが、実は他人がやればできていたのであれば、木村建設としては、その他人のようにやってくれという意味だったとも主張できるわけで、この事件は姉歯氏の「無能」が原因だったと、事件が矮小化されるおそれもあるわけだ。
この点については、鉄筋量をほかでなぜ減らせることができるのか、わたしには、よくわからない。そういうテクニックがありうるのか、たまたま、条件に恵まれれば、そういうことがありうるのかは、わたしには判断のつけようもない。(姉歯氏が手がけた物件で、他人がそれをやれば鉄筋料を減らせるのかどうか、だれでもいいから、検証してみてほしいところだ。)ただ、いえることは、一部で強く主張されていたような「みればすぐにわかる」という単純な話でもなさそうだ、ということだ。
そうであれば、確認検査機関の「過失」というものを考える上で、また、ひとつ考えるべきことが増えたということでもあろうか。

もっとも、よくわからないことは依然として多い。
そう、仮に、日本ERIが1年半前に偽造を隠避したわけではないにしても、確認した物件について、ヒューザーや木村建設が、姉歯氏が偽装に手をつけていると知っていてこれを利用するつもりがなかったのならば、なぜ、「かなりひどい設計だった」姉歯を使い続けたのか。
普通、そんなヤバそうな奴は使わないでしょう。だけど、使い続けた。
一方、日本ERIからは、姉歯氏が手がける物件は姿を消す。姉歯氏が、確認検査機関を選ぶ権限を有しているのなら、話はわかるが、そうでないなら、誰が、どんな理由で、日本ERIを避けたのか?

よくわからない。ただ、鉄筋量を減らしたいというだけでは、こんなヤバそうな奴つかう理由が見えてこないということだけが、なんとなく、わかる。
でも、彼らは、彼を使い続けたいと思っていたのではないかという気もする。
なにが、ここにあるのだろうか。

おおと、サタンのせいにしてしまうところだった。

この事件の本質のひとつは、「統治マター」(standpoint1989氏)ということにある。

建築確認・検査が「折り紙」なのかは、少々、疑問も抱くが、そのようなものとして通用することも、司法は認めているようである。(参照
そうであるとすれば、これを信頼した一般消費者は保護されるべきであるかもしれない。

ただ、以前に言及したように、これには理屈と現実的な影響とを総合的に考慮する必要があるように思う。建築確認・検査との関係で言えば、およそ、手抜き工事の物件でさえも、確認・検査を受けたには違いないのである。まして、責任のあるなしでいえば、震災被害者にはいかなる責任もないはずである。以前別項で、指摘したように、わずか数百万円の支援についてさえ、国は、あれこれと口をはさむのであり、資産形成につながるという理由から、阪神震災のおりに問題になってからこの方、不動産取得に関してこれを使用することを認めない方針を改めていないのである。
わたしは、そのこととの不均衡をどうしてもつよく感じてしまう。
もし、これが国の責任であるなら、国の責任であると明確にして、「補償」「賠償」として行うべきなのではないか。

もっとも、支援措置をとるな、と強く主張したいわけではない。むしろ、必要なのだろうと思う。
なぜなら、これは「統治マター」だから、であろう。
今回の事件は、国民生活・国民経済の基盤を蝕む大きな問題である。建築物への信頼が持てない社会というのは、たいへん問題である。
まず、精神的につらい。さらに、建物を建てるときに、実は確認・検査はあてにならないということになれば、建物を建てる際に、二重三重にチェックし、かつは、被害が生じたときのために、資産を形成しておかなくてはならない。これでは、取引費用が大きすぎて、市場が停滞してしまう。
そこで、国が、なにかのときに、フォローしますよというメッセージを力強くだすということは、理由のあることとも思われる。

ついで、統治マターというと、議論を「小さな政府」論をとる小泉政治にまで直結させてしまう方もいるかもしれないが、これもフェアとはいえないかもしれない。
たしかに、問題となっている建築基準法の改正作業は、小さな政府を志向する橋本内閣のときに端を発しているようでもある。さりながら、法改正の時期は小さな政府どころではなかった。むしろ、ある種の景気対策的な配慮もあって、急がれたのではないかと疑われる。
もともと、民間開放が建築確認・検査の分野でされたのは、その方が効率的で、経済的だから、という理由ではなく、官公庁の資源不足が原因で、量的にこなしていくことができないから、というのが理由だった。つまり、そのような確認・検査体制の量的不備が、建築期間が長期化しコスト高になって跳ね返るということ、あるいは、不動産供給のボトルネックとなっているという認識が原動力であったのである。
実際、改正前の建築確認・検査の手数料だけについていえば、10億円規模で日本が22万円であり、米が500万円、英が380万円、豪が100万円に比較してはるかに安い。官僚的非効率のせいで高いというより、コストを時間で払わされるのがいやだということだろう。
また、まちづくりなどと関連して行われたやや執拗で不透明な行政指導等(違法行政になりかねない)を忌避したいディベロッパーも少なくはなかったであろう。
結果として、「確認・検査」に要する費用が下がったかもしれないが、もともとのねらいはそこにあるのではなく、バンバン通すということに狙いがあったのである

なお、問題が発生しうるということは、改正当時からさまざまに主張されていたのである。
それを、法令にいくつかの条文を載せただけの手当てをしただけでは、実質、放置したのと同じであろう。
指定機関を、常時監督し、検査をおこなうような、厳しいシステムが必要だったはずである。そのためには、組織をつくり、ひとを貼り付ける必要もあったろう。
こういうことを、故意か、過失か、あるいは怠慢によってしなかった。
そして、それを問題としなかった政治が、責任を噛み締めるべきであろう。
(あるいは、わたしたちも)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
nagoyanさま、新年おめでとうございます。今年も記事楽しみにしています。
さて、私の住む街もヒューザーのマンションで有名になってしまいました。初詣で友人達との会話は「お気の毒だけど、私達の税金で建て直しは話が違うよね」「耐震偽造は税金で建て直しでは阪神地震の被災者が可哀想だ」っていうのが主流。
今回の耐震偽造は規模が大きかったから公的資金投入が早々に騒がれたのでしょうか?でも巷には欠陥マンションや戸建ては他にもありますよ。建築確認の責任で、国や自治体に補償を求めるなら全ての欠陥住宅も対処しないと不公平だと思うのです。それにヒューザーや木村建設(早々に倒産なんて怪しい)にきちんと責任を取ってほしい。赤字の責任不明瞭のまま税金投入し続ける日本の政府の体制そのまま反映されても嫌だなあと思うのです。
そして浅はかなちゅんはこうも考えました。銀行って3000万の価値があると判断したから、融資するわけでしょ。でもその価値が無い場合は契約無効とか出来ないんですかね。借金無くなれば不安も少し解消するような気がするのですが…。無理なんだろうなあ…。
ちゅん
2006/01/10 10:25
ちゅん様
ありがとうございます。

>巷には欠陥マンションや戸建ては他にもありますよ。建築確認の責任で、国や自治体に補償を求めるなら全ての欠陥住宅も対処しないと不公平

ディベロッパー(?)の人が、本当は施工面の方が深刻なんだといっていました。
また、民間ディベロッパーで、マンションの立替や補償を十分やれる体力のある業者は限られているとも。
もし、本件のひとたちに支援を行うなら、それを契機に「保険」制度を考えるべきなのかもしれません。うまくいくのか、よくわかりませんけど。

たしかに、金融機関っていつも傷つくことがないんですよね。なんか、金融機関に品質保証させる仕組みって考えられないのですかね。そうすれば、商品が悪い場合は、いわば「連帯責任」で借金棒引きにすることができるような気も…。
nagoyan
2006/01/11 00:28

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