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help リーダーに追加 RSS いわゆる「代理母」と子の福祉

<<   作成日時 : 2006/10/12 01:18   >>

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 事件を簡単に記すと、
 向井亜紀さん夫婦が、米国で現地の女性に依頼し夫婦の人工受精卵を受胎させ出産させた子を、わが国で実子として出生届を提出しようとしたところ、不受理となった。
 これを不服として、裁判で争ったところ、二審で向井さん夫婦の勝訴判決(出生届を受理せよとの判決)が出されたものである。
 とでもなろうか。

 この高裁判決を読んだわけではないので、勘違いがあるかもしれない。
 たしか、向井さんの訴えを認めた高裁判決は、向井さんたちが実子として出生届をだした子の福祉のためには、出生届を受理すべきだという論理であったと思う。
 もちろん、それ以外にも、向井さんの主張を認容すべきとするのであろうが、おそらく、理屈付けはどうあれ、動機としては、この部分が大きかったのであろう。

 というのは、向井さんたちは米ネバダ州の裁判所により実子として扱う命令を受けており、これに反する判決をわが国の裁判所が下してしまえば、子の帰属先がなくなってしまい、そのような重大な不利益を子に負わすことはできないという判断であったように思う。
 わたしは、渉外法はさっぱりなので、このような場合に、渉外事案なのか、そうだとして準拠法がどうなるのか、まったくわからないが、高裁判断を実質的に考えれば、十分首肯しうるものであるようにも感じる。

 ただ他方で、法務省の抗告の判断も十分納得できる。

 わが国では、有名な昭和37年4月27日の最高裁判決が次のように判断を下している。
 なお附言するに、母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当である

 つまり、わが国の司法判断は「母子関係は分娩の事実によって発生する」と考えていると捕らえられてきているのであり、高裁判決はこの点で新しい判断を含むものともいえる。そのように解することが可能である以上、最高裁の判断を仰ぐ必要があるわけである。
 むろん、現代医学を前提としない最高裁判例が今日そのまま妥当するかは、不明である。しかし、これは法務省判断の批判の根拠にならない。妥当するかどうかは不明である以上、最高裁の判断が必要だというのが法務省判断なのである。

 また、逆向きのケースが存在することについても、留意が必要であろう。
 つまり、今回のケースは母体を借りたのであるが、卵子の提供を受ける形の「不妊治療」も従来から行われており、これとの整合性という問題もあるかである。
 まず、夫婦の精子と卵子をとりだして人工授精させ、これを妻の胎内に戻して出産させるという形の不妊治療がある。これを認めるのに異論は少なかろう。
 ついで、認められたのが、卵子自体が妊娠に適さない夫婦に対して、夫の精子と第三者から提供を受けた卵子とを受精させ、これを妻の胎内に入れて出産させる形の不妊治療である。前段の不妊治療と比較すると、卵子を「借りた」点が違うのだが、臓器移殖が認められるのであれば、比喩的にいえば「卵子の移殖」も、認めることもあながち不合理ではないかもしれない。
 これは精子であっても理屈は同じであろう。(というか、精子の方が主流?)
 実際、精子・卵子ともに第三者の提供によるケースも認められている。

 しかし、これを認める以上、精子・卵子は「単なる臓器のひとつ」(つまりモノ)に過ぎないと考えるわけであるから、向井さんたちのケースについていえば、向井さんたちは臓器提供をしたに過ぎないはずである。
 わたしの比ゆはべつとして、遺伝と親子関係を切り離す判断は、平成15年の厚生労働省の報告書によっても示されている。
(2)精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療の施術別の適用条件
 ○精子・卵子・胚の提供により生まれた子については、借り腹の場合を除き、生殖補助医療を受ける夫婦の両方またはいずれか一方の遺伝的要素が受け継がれないことから、親子の遺伝的な繋がりを重視する血縁主義的な立場からは、生殖補助医療を用いてそうした子をもうけることがまず問題とされるところである。
 ○しかしながら、この点に関しては、我が国の民法においても、嫡出推定制度や認知制度にみられるように必ずしも血縁主義が貫徹されているわけではなく、また、実親子関係とは別に養親子関係も認められている。
 ○また、我が国において、AIDは昭和24年のそれによる最初の出生児の誕生以来、既に50年以上の実績を有し、これまでに1万人以上のAIDによる出生児が誕生していると言われているが、AIDによる出生児が父親の遺伝的要素を受け継いでいないことによる大きな問題の発生はこれまで報告されていない。
 ○こうしたことから、親子の遺伝的な繋がりを重視する血縁主義的な考え方は、絶対的な価値観ではなく、それを重視するか否かは専ら個人の判断に委ねられているものと考えられ、また、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療により生まれてくる子が父母の両方またはいずれか一方の遺伝的要素を受け継がないということのみをもって、当該生殖補助医療が子の福祉に反するとは言えないことから、各々の生殖補助医療そのものの妥当性の判断基準とするのは適当ではないと考えた。


 こうしてみると、自分で子を産みたいという女性の願いについては、このような制度的な手当てが必要であったろうと思われる。
 「代理母」が既婚者(既婚者でなくてもいいのだけど)で、実は子がほしかった場合に、産んだ子を自分の子としたいと考えたら、上記の母親たちと何が違うというのだろう。
 当初結んだ契約だけが、違うだけだ。
 とすると、身分関係が、契約によって動くことにならないか。つまり、子の親を契約でさだめるということに他ならない。
 これは、いいかえると、子を契約で「売り買い」することではないだろうか。
 精子・卵子の提供による不妊治療が認められている現在から出発する以上、「代理母」は、わたしにとっては、容易には認め得ないように感じられる。

 また、「代理母」については、女性の「母性」を売り買いするという面がある。
 ある人間の特定の「機能」だけを、他人のものとするということはどういうことであろうか。いや、単なる役務の提供さ、と考えることもできないのではないかもしれない。ヘルパーがオムツを変えるとのかわらない、と。
 そうなのだろうか。むろん、どのような労働も労働者の人格と分かちがたく結びついている。しかし、「母性」というのは、まさに人格の一部ではないだろうか。
 ここで、考えているのはきわめて原理的なものであって、向井さん夫婦と「代理母」の女性との間に存在した人間的関係についての評価を一切含むものではない。向井さん夫婦とその女性との間に存在した人間的関係は、まさに人間愛に基礎付けられた関係であったのだろう。わたしは、向井さん夫婦を非難するつもりはまったくない。
 しかし、個別の事例を離れて考えれば、やはり、人間を道具視する考え方をその基礎に有していると評価せざるを得ず、そうである以上、賛同しがたいのだ。

 母子関係が分娩による基礎付けられるべきであるという主張によって、向井さん夫婦の願いを打ち砕く理由になるであろうか。わたしは、ならないと思う。
 しかし、たしかに、妊娠・出産を経なければ、自然な親子関係が築けない、という主張は根拠がないであろうが、しかし、それ以上に、遺伝子にこだわるのは、どうも観念的な血統主義ではないだろうか。
 国際養子縁組は、どうもきれいごとではすまない面があるが、それでも、北欧諸国を中心にアフリカなどの途上国から養子を迎えているのは、私たちの社会でも少々見習ってもいい。
 子を育てることの喜びは、自分たちの遺伝情報を残すものでないものに愛情を感じられないほど偏狭なものでもないだろう。
 むろん、向井さん夫婦のような方々が、「自分たちの子」をほしいと切実に願っているという気持ちは理解できる。
 しかし、「自分たちの子」とは何かが、問題なのだ。遺伝子され受け継いでいれば、いいというものではないであろう。社会的な不都合が大きすぎるように感じるので、やはり認めがたいのではないだろうか。

 向井さん夫婦の件にひきつけて考えれば、その子を養子として「ひきとる」ことはできなかったのであろうか。(もっとも、日本でできない「代理母」を海外で雇って、便宜的に養子としてひきとるというようなやり方は好ましくない。本件の個別的な解決方法として述べたまで。)

 それに、「代理母」「借腹」って、究極の「側室」制度であるように感じる。
 なんか、…賛成しがたい。

 (…本題前に力尽きた。)

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
nagoyanさまこんにちは。本題前に疲れてしまう気持ちよくわかります。代理母に関しては先進国では禁止の方向にあると思います。アメリカだって多くの州は禁止です。いろんな意味で医療先進国のアメリカでも代理母にまつわる様々なトラブルが多いため禁止の流れになっているのだと解釈しています。その中には子供のメンタル面での影響もあるでしょう。
私は向井夫妻の行動を発端に日本でも代理母は法律でしっかり禁止されることを願います。不妊治療と代理母は別物だと考えるからです。一般人まで血統主義尊重なんて御免です。
向井夫妻には争うエネルギーを子供がまっとうに育つように頑張るエネルギーに向けて欲しいです。彼らの行為が彼らの子供達の処遇を複雑にしてしまったのですから。その責任は子供達にはありません。子は親を選べないのですもの。
どうでもいいことですかこの件で「高田夫妻」という人少ないですね。やはり産むのは女性だからかな。
ちゅん
2006/10/12 13:26
>この件で「高田夫妻」という人少ないですね。やはり産むのは女性だからかな。
はっとさせられました。わたしは、意識して「向井さん夫婦」という言葉を使っていましたが、決して女性を揶揄するような意図からではありませんでした。(話題が、「母」が誰かということ、だからです。)しかし、ご指摘を受けて考えて見ますと、世間での使われ方には悪意あるようなものもあるように見受けられるように思います。
ダンナの高田氏も、男らしく(?)もっと前へ出てしゃべるべきかもしれません。
nagoyan
2006/10/14 09:47
InfoC管理者といいます。はじめまして。代理母に関する話題に関して書いていらっしゃるので、コメントを送りました。私、ナノピコ放送局(http://www.infococktail.co.jp/pickup/contents.cgi?topic_id=9)というサイトを運営してまして、代理母の問題を含め様々なテーマに関して、トラックバックを用いて皆様の意見を集めています。ブログ読者を増やすのにもお役に立てると思います。トラックバックしてみませんか?代理母以外でも興味があるテーマがありましたらブログ記事のトラックバックを送って下さるとありがたいです。解説はhttp://www.infococktail.co.jp/index7.htmlにあります。勝手なコメントを送り申し訳ありません。ただブロガーの皆様のお役に立てるサイトになるのではと考えています。よろしくお願いします。
InfoC管理者
2006/10/20 03:30
生殖医療に関しては、正直身近な問題だとは思っていませんでした。しかしながら、実兄がAIDにより子供を授かりもうそろそろ産まれる段階にいたって両親の心情、私自身の心情から申し上げると。「血のつながりのない子を受け入れられない。」の一言に尽きます。親戚としてですが。
 血の繋がりのある義理姉には、出産の喜びでいっぱいの様子が、非常に複雑な雰囲気を醸し出しています。AIDであることは、兄の過去の病歴、兄の通達から家族では周知の事実であります。
 とにかく申し上げたいのは、実際に血縁関係でAIDでさえ受け入れられないのが日本で育った一般的な家庭の心情です。男性側の(血のつながりにない親戚)側と出産および血縁としての確立された母側との受け止め方の違いは致し方ない一面もあるのです。
 代理母はそれ以上の踏み込んだ内容とも思え話題に関して興味を持っております。
かおり
2007/05/13 22:14
かおり様
なにかと忙しくしておりましたので、返事がおそくなり、申し訳ありませんでした。
代理母の問題は、本当に難しい問題です。この種の問題に悩みを感じることがない議論は、どうも信用する気にはなれません。
その意味で、
>実際に血縁関係でAIDでさえ受け入れられないのが日本で育った一般的な家庭の心情です。
というご心情は、ご率直なものだろうと拝察いたします。

一方で、配偶者の子を自分の養子として育てられたり、まったく血縁関係がない子(子を養育する能力のない親の知合いであったという話です)を養子として育てられた事例も身近に承知しております。
おそらくご当人方も悩みがあったことと思いますが、そのあたりを伺ったことはありません。

nagoyan
2007/05/16 18:08
私事ですが、わたくしもしばらく子を授からなかった時期がありました。専門医の診療を受けようかと妻と相談していた時期もあります。わたしは、もし治療が妻の負担となるようなら、子がなくてもいいと思っておりました。妻がどう思っていたかわかりませんが、その旨、実家の母に通告したこともありました。母としては言いたい事もあったかもしれないとは思います。
幸いにして、その矢先に長女が授かり万事事なきを得ました。もし、長女が授からなかったらどのような決断をしていたか、わたし自身にもわかりません。

まして、かおり様のお兄様の場合では、お兄様も、またご親族もさぞお悩みなされたことと拝察いたします。

今後も、ご率直なご意見をお願いいたします。
nagoyan
2007/05/16 18:08
返信遅れました。
兄の子供(血のつながらないAIDの子)が8月に生まれました。事実としては、当方の親・兄弟でも受け入れがたくお祝いはする心情になれず9月にいたっています。子供には罪はないとはいえです。「AIDであることを子供に伝えてくれるのであれば、受け入れることが出来る」との声もあります。正直、子供は子供が産まれ話題になることは「両親に目鼻立ちが似ているか、似ていないか。」の1点に尽きます。その話題以外にどんなほめ言葉がありましょうか。。。。それが口に出来ず。です。
子供の両親が「一生秘密にしたい」という思いがある限り、うまく親族とはなじめないという状態です。現実とはこういうものです。また、言葉たらずとなり 反感を買うかも知れませんが、「自らの希望で、顔もわからない男性の子を産み育てることが出来る女性は怖い。わたしたちの理解を超えているという受け取り方をしてしまう一面がございます。」これは、女性特有なことかもしれません。
かおり
2007/09/03 22:20
返信遅れました。
兄の子供(血のつながらないAIDの子)が8月に生まれました。事実としては、当方の親・兄弟でも受け入れがたくお祝いはする心情になれず9月にいたっています。子供には罪はないとはいえです。「AIDであることを子供に伝えてくれるのであれば、受け入れることが出来る」との声もあります。正直、子供は子供が産まれ話題になることは「両親に目鼻立ちが似ているか、似ていないか。」の1点に尽きます。その話題以外にどんなほめ言葉がありましょうか。。。。それが口に出来ず。です。
子供の両親が「一生秘密にしたい」という思いがある限り、うまく親族とはなじめないという状態です。現実とはこういうものです。また、言葉たらずとなり 反感を買うかも知れませんが、「自らの希望で、顔もわからない男性の子を産み育てることが出来る女性は怖い。わたしたちの理解を超えているという受け取り方をしてしまう一面がございます。」これは、女性特有なことかもしれません。
かおり
2007/09/03 22:20

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