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zoom RSS 被告人は「無罪」

<<   作成日時 : 2004/12/17 21:42   >>

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次の記事を読まれた方も少なくないだろう。これについて、思うところを若干。

「自衛隊宿舎でビラ配りに無罪 東京地裁支部」(中日)(http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20041217/mng_____sya_____000.shtml
「反戦ビラ訴訟、3被告に無罪 地裁八王子支部」(朝日) (http://www.asahi.com/national/update/1216/020.html
「防衛庁官舎でビラ配り、「テント村」3被告に無罪判決」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20041216it08.htm


隅田様がそのブログ「隅田清次郎野残日録」で「家族の危険について」(http://sudas.cocolog-nifty.com/main/2004/12/post_6.html)という記事を書かれていたので、気にとめていたが、案に相違して、「無罪」だった。
しかし、隅田様とわたしが異なるのは、まぁ、よかったかな、というのがこの判決の感想である点であろうか。

活動家とよばられる人たちの「ひとりよがり」の活動に「巻き込まれた」場合の苦痛は、確かに、耐え難いものがあるように思える。
わたしも、かんべんしてやれよな、とも思う。
自衛官にしても、その家族にしても、イラク派遣になんの責任があるのか。
被告人たちは、自分たちの主張を広めるためと言うより、いたずらに「敵」視する自衛官たちを困惑させ、いやがらせをするためだったのではないのか、との感想も正直もつ。

しかし、今般の判決はやはり支持されるべきであろう。

ひとつは、住居侵入罪で訴えたことである。
住居侵入罪は、ご承知のとおり、判例が住居権説、団藤・大塚ら有力説が平穏説、通説は住居権説をとっている、という状況であろうか。
しかし、住居権説であっても、公的空間には黙示の許可があったとする見解や、進入態様によって、許可の有無を測定しようとするなど、実は、住居侵入罪は、その外延が明確でない、つかいにくい犯罪類型なのである。

この点、地裁判決は住居権説にたって、被告人の行為が住居侵入罪の構成要件にあたる、としている。
しかし、どうやら違法性の部分で進入態様を問題にしているようである。進入態様が平穏であったので、可罰性が低いということらしい。

次に、本件がビラ配布に対する事後規制となっていることから、憲法21条の表現の自由との関係でも問題となった。
というのは、他の商業用宣伝ビラの投函は放置されていたのに、本件ビラ投函行為だけが、起訴されたことから、本件ビラの記事内容に対する表現内容規制にあたるという点から憲法21条に反しないかが争われたが、これに関しては、判決は「その趣旨から疑問」として、被告人側主張を認めた。
中日新聞の記事解説には、警視庁側から防衛庁側へ被害届の提出を要請したらしいから、この点も当然問題となろう。

ビラ配布は日常的な情報伝達手段であり、たとえば、公団住宅の敷地内に入らなければ、各家庭の新聞受けなどに投函することができないであろう。
もし、これを禁ずるとなれば、表現の自由に多大な制約を課すことになる。他方で、その結果、住民が甘受しなければならない不利益は、ビラを捨てるという程度のものであろう。

もとより、文面が、脅迫にあたったり、あまりに精神に強いストレスを与えるようなものである場合は、別途、他の刑罰の適用を考えればよいのであって、そうせずに住居侵入罪で立件した事情そのもの(つまり、他の刑罰の適用が困難であるので、住居侵入罪を「借りて」処罰しようとしたこと)に、本件が政治的意図によるものであることを、つよく窺わせる。

とはいえ、同じ人間なのだから、やむなくイラクに赴くことになるかもしれない自衛官とその家族を狙い撃ちにするような、ビラ配布は、表現活動としての「礼節」を欠いている。
もし、たとえば、管理者の制止に反し、執拗に配布するなどの行為があれば、住居侵入罪の適用も考えられるであろう。

控訴審、上告審でひっくり返る可能性も、決して少なくはない、と思う。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
家族の危険について
天木氏が、八王子地裁の立川反戦ビラ入れ裁判について注目すべきと書いている。 天木 ...続きを見る
隅田清次郎残日録
2004/12/23 21:40

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。法律にはあんまり詳しくないので、よく分からなかったのですが、各戸にビラを撒くために通路に入ったというのが事件の経緯なのですよね。最初どこが問題なのかよく分からなかったです。
うちにもしょっちゅうピザの宅配の広告や、不動産のちらしなんかが入っていますが(こないだは「ものみの塔」が入っていました^^)それとどう違うのかよく分からなかったのですが。
自衛隊員及び家族があらかじめ拒否感情を示すだろう内容のことを書いていたのがいけないのでしょうか?
うーむ。
「自衛隊員は人殺し!」とか書いていたら問題なのかも・・・(やってそうだし)。
ビラ・ちらしの宅配は基本的に駄目ってことでしょうか?
エロちらしとかは随分問題になっていましたが。
standpoint1989
2004/12/18 12:07
standpoint1989さん今日は。
とりあえず、内容が法令に違反しているかどうかは問われていないようですね。
起訴事実の構成要件は住居侵入ですからポスティングの態様が問われたということでしょうね。
swan_slab
2004/12/19 07:08
standpoint様
コメントありがとうございます。最近、身辺慌ただしい上に風邪を引きまして、コメントいただいていたことは承知していたのですが、返事が遅くなりました。非礼をお許しください。

swan_slab様
コメントありがとうございます。swan_slab様がこの話題をとりあげてくださるかなと少し期待もしているのですけど。(「他力本願」なわたし。(笑))

まさに、standpoint様のご指摘になられることが、住居権説の弱点のように思います。可罰性の低い進入行為を全て構成要件に包含してしまうのは、疑問です。平穏説なら、最初から構成要件に該当しなかったでしょう。(私は、古いタイプですから、団藤・大塚説に親近感を感じます。)
nagoyan
2004/12/19 11:49
住居権説に従えば、地裁判決は唯一の回答ではないと思います(例えば、商業ビラの配布が黙認されていたのなら、ビラ行為のための進入について黙示の許諾があったと考えることもできるかもしれません。)が、「自然」な解釈であるようにも思えます。
今般の問題は、地裁の示唆するように特定表現を狙い撃ちした恣意的な「住居侵入罪」の適用にあるように思います。この点も、違法性判断に組み込まれているでしょう。(本来的には、可罰性と表現の自由の抑制はあまりリンクしないはずですが、起訴そのものを裁量権の範囲内で不当でなかったとしたので、ここで考量したのでしょうか。わたしには「不当起訴」にようにも思えますが、それだけ、起訴便宜主義の壁は厚いというこでしょうか。)
nagoyan
2004/12/19 11:50
わたしが、表現内容が住居侵入罪にも影響するかも、としたのは、私自身がそう考えるのではなく、住居権説の一部には住居権の内容として平穏を考える説もあるからです。この考え方によると、侵入行為が平穏を欠いた場合、たとえ明示の許諾があっても、真意に出た許諾でなく可罰性ありとも考えられ、そうであるとすると、たとえば、脅迫など他の刑罰に該当する可能性があるビラ配布行為も、可罰的な侵入行為ととらえられる恐れが残るように思えます。
ともあれ、プライバシーと表現の自由はいつでも悩ましいですね。
nagoyan
2004/12/19 11:51
風邪をひかれたとのこと、ご回復をお祈り申し上げます。お大事におすごしください。あわただしい時期ではございますが、決して無理をなさらずに。

>不当起訴
ですね。判決の背後にある価値判断は【いきなり検挙】という言葉に表れているように思えました。公訴権濫用とまではいえないでしょうけれど、明らかにやりすぎという印象をぬぐえませんでした。勾留70数日って普通の社会人なら一旦人生やり直しを迫られますよ。

学説については、例えば「卒業生が校庭でサッカーをしていたケース」を無理なく判断できる考え方を選びたいです。構成要件該当性判断というのは明確性がいのちですから悩みがないわけじゃないですけれど、平穏侵害説に惹かれます。
swan_slab
2004/12/20 22:20
>明らかにやりすぎという印象をぬぐえませんでした。勾留70数日って普通の社会人なら一旦人生やり直しを迫られますよ。
中日社説でもこの点は批判していました。彼らの活動の態様がどうであれ、勾留が2ヶ月以上というのは、尋常じゃないですね。住居侵入なんて、「重」罪じゃないでしょ。勾留は、逃亡・罪証隠滅の防止が目的のはずなのに、取り調べ目的、今回に至っては「懲罰」の趣旨のために、身柄拘束がなされている、と感じます。いつも、この点については、刑訴法は空文化していると思いますね。故いかりや長介の「取調室」というドラマシリーズなどをみていると、知られていないんだなぁ、と思いますよ。
nagoyan
2004/12/22 20:39
風邪をひかれたそうで、コメントを差し控えておりました。
nagoyan さん、swan slab さん、レスありがとうございました。
standpoint1989
2004/12/22 22:14
お風邪をめされた由、お大事になさってください。
拙いblogをみていただき、この様なエントリーをしていただいたこと、ありがとうございました。
裁判官の判断も、nagoyanさんの判断も良識あるものだと思います。
ただ、裁判官は住宅侵入を認めていますよね、これは今後も警察が利用することを可能にしたと考えていいのでしょうか。
運動家を脅すためと云わず、お互い迷惑ビラに困ってますよね、少し減らしましょうかと云われたら、誰でもピンクビラのことと思って署名する危険があります。
また、住宅部分に入れば逮捕では、ほとんどの人間が逮捕可能になります。
有罪目的より、今後の警察の介入方向の実験のような気がします。次になにが来るか心配です。
隅田清次郎
2004/12/23 21:10
ビラ配布は女性のようですね。
当初の思惑には自衛体内にシンパを作ったり、いやがらせもあったでしょうが、
月1回女性が配布なんて
支援者に活動報告書をだす実績作り、いわゆる資金集めにスポンサーへのアリバイ工作としか思えません
隅田清次郎
2004/12/23 21:33
月1回女性が配布程度では
逆に悪質とは思えません。

私は宗教ぎらいですが
ものみの塔は毎月なにやら置いていきます。

ほぼ、読むことなくゴミ箱行きですが。
デイジー
2004/12/25 16:45
standpoint1989様
記事で拙稿をお採り上げくださっていたことは承知していたのですが、よいコメントも思い浮かばず、体調不良を理由に失礼いたしておりました。
本来なら、御記事にコメントの上でお詫び申し上げるべきでしょうが、年末年始のお休みに入られるとのことでしたので、この場を借りてまずはお詫び申し上げます。
nagoyan
2004/12/25 19:07
隅田様
コメント並びにTBまでいただき、大変恐縮しております。
警察介入の思惑、おそらくご指摘の筋が強いようにも思えます。公安主導だったのでしょうか。通常の刑事捜査では考えられないような、「強引」さが目立ちます。
わたしたちの市民的自由が、目に見えやすい「迷惑」を根拠に脅かされていくのは、やりきれません。
nagoyan
2004/12/25 19:07
デイジー様
コメントありがとうございます。
確かに、月1回女性が配布というのは、悪質ではないと思います。
もっとも、私の知る自衛隊の宿舎(京都、守山と小牧ぐらいですが)というのは、高いフェンスに囲まれており、基本的に外部者の侵入を拒絶する意思を明らかにしております。進入ができないわけではないようにも思えますが、住居権説に従えば、管理者の住居管理権を脅かせば、違法となるわけで、あとは可罰性判断という理屈です。住居侵入罪という犯罪類型がもともと抱えている問題点が明らかになったと思っております。
nagoyan
2004/12/25 19:17
補足
わたしが、「礼節」をいうのは、C130が編隊を組んで濃尾の空を幾度と飛ぶのを見上げるとき、彼らはおそらく一度たりと行ったことのない異国へ、国家の命令にもとに赴くのだと思い、ついで、彼らと彼らの家族は何を思い、何を考えているのだろうか、と考えます。
声高にイラク派遣の是非を彼らに叫ぶことになんの意味があるのでしょうか。
彼らを、砂漠の国へ送り込んだのは、主権者国民です。そして、わたし自身について言えば、今はいささか考えに反省すべき点があったと思うけれども、当時は「やむなし」賛成論者でした。
政策担当者にはいいたいことはいっぱいあるけど、彼らには無事の帰還を祈るだけです。

さて、今年の風邪は、大変たちが悪いようで、皆様もくれぐれもご自愛ください。
nagoyan
2004/12/25 19:19

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